スタイルを押し付ける

時々、よく耳にするのが、お客さんの要望を全く無視して美容師側のスタイルを押し付けて、なりたくもない髪型にしつつお金をもらってる美容師さん。

レストランに例えたら、メインは魚を食べたいって言うお客さんに、無理やりウンチク並べて肉を食べさすようなシェフ。

結局、まだ経験年数が少なくて、レパートリーが少なく、お客さんの要望の髪型ができない美容師さんが多いってことですね。

あとは、どこへ行っても注文と全く違う髪型になるから諦めてた…。というお客さん。
それも、美容師側の経験が少なくて、レパートリーが少なく、それしか創れない美容師さんが多いってことですね。

クライアントがどんな写真を持ってきても、その写真から一瞬にして3Dの展開図を頭のなかで広げて、それからそのお客さんの骨格、肩幅と背の高さとのバランスを計算し、眼と鼻と口の位置や頬骨の高さなどのバランスを計算し、似合わせるためのアレンジを考えます。そして頭の歪みや毛流、渦巻きの位置や左右の毛量のバランスを計算します。あとは普段の手入れ方法をどうされているのか聞いて、できるだけ手入れが簡単な削ぎ具合を計算します。

お客さんの理想の髪型を叶えてもらうために、たくさんの計算とセンスが必要です。

まだ経験が浅くてカットに自信の無い美容師さん。スタイリストになってしまったけど困っちゃいますよね。是非、たくさんのスタイルの本を見て、街でたくさんの髪型を見て、そして自分の頭の中で3Dに展開図を描けるようにして下さい。ワンレン・グラデーション・レイヤー・スクエアーの4つの組み合わせで、どんな髪型でも創れるようになります。メンズを極めたい美容師さんは、是非とも理容の技術の固定刈り、連続刈り、すくい刈りを練習して下さい。メンズは頭の歪みと渦の流れを計算しないと、バランスの悪いカットになってしまいますから。

そうすれば、押し付けなくても、誤魔化さなくても、お客さんの願いを叶える事ができるようになります。

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パーマが、とれる。

パーマで、とても大切なプロセスの一つに「中間水洗」というのがあります。

日本では当然やってると思っていたのですが、札幌ではまだまだやってるお店は少なく、表参道でも一部の勉強熱心なお店しかやっていない事に驚きました。

パーマをかけたことのある人ならお分かりかと思いますが、

パーマを巻いた後に薬剤を塗布しますね。

昔は以下のようでした。
1液(温める場合もあり)キャップを被せます。

中間リンス(スプレーでシュッシュッと)

2液を7分(キャップは外して空気にさらします)
2液を再度7分

ロッドを外します。

毛髪科学をキチンと勉強すると、これが駄目なのが分かります。
髪に負担をかけてしまい、危険ですし、薬剤が正しく作用してくれませんから、持ちが悪く直ぐに取れてしまいます。

残念な事に、殆んどの美容室が、この昔ながらの方法でパーマをかけています。

正しくは
1液(温める場合もあり)キャップを被せます

お湯で1液を全て綺麗に流します。

【理由は】
1,健康な髪は弱酸性ですが、1液はアルカリ剤です。酸性リンスをスプレーでシュッシュッとかけたぐらいでは、酸性に傾きませんし、2液は酸性ですが、アルカリ剤が残っている髪に2液の酸性をかけたところで、効力が弱まってしまいます。きちんとお湯でアルカリ剤を流してから、次の酸性リンス→2液をかけて、正しい効果が発揮されます。

2,アルカリ剤(パーマ液、カラー剤)が髪を痛める原因です。1液のアルカリ剤を髪の毛に残したまま、2液をかけるということは、1液の髪の内部にダメージの原因を残したまま閉じ込めてしまうということです。中間リンスをかけただけで、アルカリ剤の存在自体が消滅するわけではありません。きちんとお湯でアルカリ剤を流して、ダメージの原因となる物質を流してあげてから、2液を塗布してあげることによって、ただしいかかりとダメージレスのパーマに繋がります。

※オーストラリアの美容学校で毛髪科学を勉強しました。日本の専門学校では教わらなかった事も勉強し、その時にパーマの中間水洗について習いました。「どうして日本のパーマ液は中間水洗しなくていいのだろう」そう疑問に思った僕は、日本のパーマ液のメーカーに問い合わせをして、行き着いたところが日本パーマ液工業協会というところでした。

そこでは、「日本でもパーマ液は中間水洗をしているというを前提に、パーマ液は製造されていますから、日本でも海外でも中間水洗はしなくてはいけないのです」と。。。

でも、「どうして日本の美容室で、正しくパーマ液を使用しているお店は無いのですか?」と聞いた所、「やはり先輩から口頭で教わるだけで、毛髪科学として勉強しているお店が少ないからでしょう。ロッドを付けたまま水洗するというのは、お客さんに負担をかけるから宜しくないなどの理由が推測されます」

ダメージに繋がったり、直ぐにとれたりした方が、もっと駄目じゃないですか。

もっと毛髪科学を勉強すると、パーマを巻くときに必要な処理剤の成分、中間水洗の時に必要なタンパク質、後処理に必要な収斂作用のある処理剤、そのような作業工程が必須になってくるとわかるのです。

きちんとパーマをかけると、指ざわりが自然で、パーマをかける前よりも髪質が良くなったようにさえ感じるのです。

カット講習

カット講習へ行くというと「教えに行くんですか?」(笑)とか「今更なんで?」とか言われるのですが、2〜3年に一度は参加するようにしています。

人間の身体というのは、無意識のうちに楽な体勢へと動いてしまうもので、それがクセとなって、無駄な動きが多くなり誤差が生じてくるんです。

立つ位置が5度ズレるだけで、カットの誤差が3ミリ〜5ミリ出て、その積み重ねで仕上がりに溜まりができたり、収まりが悪くなったりするんです、そしてそれに気づいて再びクシを入れて修正しなくてはならず、たった数度の立ち位置で修正という手間が増えてしまう。

その自分のクセの軌道修正に、お金を払って講習会へ行くんです。他人の仕事は細部まで見えますが、自分の仕事って見えないし、ある程度の年齢を超えると、誰も注意なんてしてくれません。講師の先生はお金をもらっている以上、気が付いたところは注意してくれますから(笑)

今回も、「この部分を削ると、もっと収まりがよくなりますよ」って先生が2ミリ修正してくれただけで、本当に収まりが良くなるんです。っていうか、何でここが2ミリも誤差が出たんだろうって考えると、「そっかー自分の体勢が楽な方に身体が動いていたからか〜」と分かるんです。

こうやって勉強するのは、上手になりたいからではなく、明日のお客さんに「手入れが楽だった、思った通りのスタイルに仕上がった」って喜んでもらいたいって思いがあるからです。

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訪問理美容

某病院から訪問理美容の依頼が来て、でも往復3時間の距離だし、僕は車を所持していないので出張で行ける範囲は地下鉄沿線かJR沿線の駅から近い所に限られています。大手の専門業者の方が安くて敏速だし設備もしっかりしてるので、そちらをお勧めしたのですが、看護師さんから「どうしても」とお願いをされて、断る理由もなくなり、行って来ました(笑)

そこは精神科内科の病院で、依頼人は70歳過ぎたお爺ちゃん、
カット顔そり白髪染めのオーダーで、座ってる間も前屈みでどこかに捕まってなくてはならず、施術中もヨダレが垂れている状態で2時間も座ってられるのかな?って状態。

(15年以上も前だけど別の精神病院の閉鎖病棟へ1年くらいボランティアしてたことがあるので、そういうのは慣れています。)

全部終了してお爺ちゃんは病室へ戻り、僕は掃除をしてカバンに荷物を詰め、帰ろうとしたところ、無精髭も無くなり、黒々とした髪でさっぱりしたお爺ちゃんが戻ってきて。

「俺が玄関まで荷物運んでやっから」

お爺ちゃんなりの感謝の表現だったのでしょう。喜んでその好意に甘んじる事にしました。

最初にお会いした時は、片足引きづりヨタヨタ歩いていたお爺ちゃんが、元気にガラガラを引っ張りながら、どんどん先へ進んで行き、玄関どころかバスの中まで乗り込んで、カバンを運んでくれました。

最後に、滑舌が悪いながらも「またお願いします」って笑顔で言ってくれて、僕はお爺ちゃんの手を取って握手をし、バスに乗り込みました。

自宅に戻って父親にその話をしたら、そこって僕の実のお爺ちゃんが入院して亡くなった病院で、今年27回忌だったそうです。

本当に最初はお断りしてたんです。僕がいかなくても、お爺ちゃんの顔剃りや白髪染めなんて理容組合に電話して近所の床屋さんにやってもらえば近くて冬の雪の中でも来てくれるし…なんて驕りがあったんですよ。

でも、反省しましたね。自分の所に依頼が来るという時点で、意味があるんだって。仕事って結果だけみれば他の誰でもできるし、僕より上手なベテラン理容師さんはいっぱいいるけど、そのカットしている間の手の動き、呼吸、語りかける声、触れる手の柔らかさ、笑顔などなど、もしかしたら僕じゃなければ駄目な理由が1個でもあるのかもしれないんだって、だから帰りがけに身体の不自由なお爺ちゃんが喜んで荷物を持ってくれたんだって。

自分の心が洗われた1日でした。

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